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働き方の最適解

2020年11月にフリーランスになってから、1年半になる。未だかつて、一つの仕事が1年半も続いたことはなかったので、私にとって、1年半続けられたのは快挙だ。

 

学生時代のアルバイトだって、全然続かなかった。塾講師、受付スタッフ、飲食店のホールスタッフ、その他諸々、たくさんの短期もしくは短期になってしまったアルバイト達。大学を卒業してから生活のために始めた非正規雇用でも、それは変わらなかった。

 

どの仕事も行くのがしんどかった。心を病んでいることが判明してしばらくは、病気が仕事に行くのを辛くしていたのだろうと思っていた。

 

勿論病気のせいもある。でも、それだけではなかった。

 

私は今まで続けられなかった仕事のことを好きでもないし、興味も抱いておらず、そこで関わる人々に好意も敬意も関心もなかった。それから、「どこかに出勤する」という働き方が致命的に向いていなかった。相手が誰であれ、人と同じ空間で過ごすことに、ストレスを感じる性質をしているから。

 

佐藤友美さんの『書く仕事がしたい』に出てくる、佐藤さんが唯一ライターに向いていないと思った人の話に似ている。その人にとってはライターが、私にとってはそれまでの経験職種が、不向きな仕事だったのだ。

 

不向きなのに無理して仕事していた私も大変だったけれど、不向きなのにその職場にい続ける私の相手をする組織も大変だっただろう。不幸なミスマッチだったと思っている。

 

ライターになるまでの仕事で、理不尽な扱いをされたこともある。だが、前職に関しては本当によくしてもらった。合理的配慮の観点からも、文句のつけようがないほどに。

 

それでも、「ここで働き続けたい」とはどうしても思えなかった。皆よくしてくれる。人の顔を覚えられなくても、コミュニケーションが苦手で対人の仕事ができなくても、疲れやすくても、そこに対して刃を向けられたことはない。どうやったらいいのか、職場の制度の中で何ができるか、考えてくれた。

 

働きぶりも、評価されていた。仕事が丁寧。不明点はしっかり確認してくれる。そう言われており、ステップアップのお誘いも頂いた。前職は、今までよりは適性があったのかもしれない。でも、ステップアップした先に、その人達がどんな働き方をするのか、どんな仕事をするのか見ていたら、「自分にはできない」と思った。心も、躍らなかった。

 

安定した収入を求めるならば、ステップアップのお誘いを受けて、そこに出勤し続けるのが最短ルートだ。でも、その未来を考えたら、心が死んだ。

 

「好きなことで、生きていく」のが簡単じゃないことは、理解していた。でも、私には「心が躍らない仕事を収入のためにし続ける」ことはできなかった。

 

前職を「続けられない」と思ったとき、私は本格的にフリーランスのライターになることを考えた。それまでも書き起こしやエッセイの執筆を少ししていたけれど、どう見ても食べていけるほどの稼ぎではなかった。

 

それでも、書く仕事は、「お金のために仕方なくするもの」ではなく、「目に映るすべてが興味深く、世界を広げてくれるもの」だったのだ。

 

当時の私が誇れるものは、己の文章だけだった。経済的に自立して、心も死なないためにはやるしかない。「どうやって死なないか」を考えるしかない。

 

発達障害とうつ病を理由にした障害年金の申請をし、経済的に余裕があるうちに書き起こしの仕事をもらっていた人に教わったライター講座を受講して、ライターとして大事なことを教わった。その講座に勇気をもらい、営業をして、いくつかの取引先ができた。

 

障害年金の申請はフリーランスになってから1ヶ月後に通った。

 

それから約1年半、危ういながらも少しずつ仕事の幅を広げてきた。劇的に成長しないもどかしさが焦りに変わることもあったけれど、自分の力を信じて着実に積み重ねている。

 

ここまで書いてようやくタイトルの話になる。先日、「精神障害のある人が働ける場所がない」とツイートしていた人を見かけた。また、就職や転職について相談を受けることが度々ある。

 

私はキャリアの専門家ではない。自分がどうやってキャリアを切り開いてきたかについてしか、語れない。だから、これは私のやり方だ。

 

まず、何よりも自分のことを事細かに知ることだ。得意分野もそうだけれど、働き方の環境のすべてにおいて、自分の求めるもの、妥協できる部分などを挙げていく。この過程で、発達障害やうつ病といった病気、セクシュアリティなどの属性が絡んでくるかもしれない。

 

でも、注意してほしい。属性は、あなたではないのだ。発達障害があると一括りに言っても、「対人業務が好き」という人だっているし、「苦手で、絶対無理」という私のような人もいる。属性ゆえに、どういうことがひきおこされているのか、分析しよう。

 

それから、導き出したその条件を満たす仕事を探そう。フリーランスのライターで、収入を安定させたい、など難しいことを言っていたら、何を大事にしたいか優先順位もつけながら、仕事探しをする。働き方リサーチだ。

 

そして、大事なことはやっぱり自由な発想なのだと思う。高校生の頃の私は、自分がフリーランスのライターをやるなんて思ってもみなかった。働き方は、作っていけるんだろうなと、最近思うようになった。

 

精神障害があると、最適な働き方をさせてくれる企業は少ない。フリーランスも、人によっては、不安定さがメンタルに響く。それは、事実なんだけど。

 

自分の適性をこれでもかと分析し、その上で戦略を練り、必要なことをやる。その先にしか、働き方の最適解はないかもしれない。

 

私も道半ばなので、これからも分析と戦略を練ることを続けていくつもりだ。