幼い頃から、歯医者にはあまり縁がなかった。歯科矯正の必要もなく、歯みがきは得意ではないけど、そうそう虫歯にもならず、といった人生だった。
しかし昨年夏、歯が痛くて、どうせなら悪いところ全部治してもらおうと歯医者へと向かった。勇気を出したはいいものの、予約制のところに予約なしで行ってしまったので一日ずれこんだりもした。
レントゲンを撮ったりしながら、順調に治療を進めていくなか、重大な事実が発覚する。
「歯に亀裂入ってるね」
歯に、亀裂? 何で? 私、そんなにひどい虫歯に気づかなかった……!?
混乱する私に、先生は優しく教えてくれた。
「歯ぎしりですね」
歯ぎしり。聞けば現代病の一つであるという。そんな自覚はないが、頬の裏側に証拠があり、歯ぎしりは事実と確定した。
では、どんな治療をすればいいのか。歯が無事であればあるほど、老後のQOLが高い印象を周囲の高齢者から受けていたので、歯はできる限り大事にしている。
そこで、出てきたのがマウスピースである。先週、ひんやりした型を噛んで、今日調整して、初めてマウスピースをはめた。
異物感。歯科矯正をしていた人たちって、毎回こういうの大変だったんだろうなってちょっとだけ思った。
透明な、私の歯に合わせて作られた、マウスピース。これからこれが私の寝る支度に組みこまれる。